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フレンチトーストから始まる記憶と現実の温かな旅
「あ、明日の朝フレンチトーストが食べたい」
髪を乾かしていると、翌朝の朝ごはんが決まった。
歯を磨いていたり、ドライヤーをしているときにどこからともなく降ってくる未来の予定たち。一体どこから現れるのだろうか。
そんなことを考えているわたしは、
お気に入りのカフェのフレンチトーストを目の前に、こうして言葉を綴っている。
自然と呼吸が深くなり、こころと体がゆったりとしている。
目の前には、丁寧に並べられたもちもちのフレンチトースト。前ならえをするバナナたちと、キュッと背伸びをしたホイップクリーム。そして、その隣で優しく微笑むシロップ。
「・・・あ! 」
リズムよく流れるビートに心が躍った。
えーっと、、この歌。何だっけ!ん〜…
「あ、I Choose You (Sara Bareilles)だ!! 」
留学していた頃によく聞いていたなぁ。
当時の記憶がふわりと蘇る。
ホームステイ先の家の近くに大きな公園があって、いつもそこを歩きながら聴いていた。お気に入りのニット帽をかぶり、ヘッドホンをかけて歩くバス停までの道。
鼻をスーッと通る、心地よく冷たい風。互いを知らなくたって笑顔で ‘Hi’ と挨拶を交わす優しい道のり。薄っすら霧がかっていたっけか。
耳から伝わり、記憶へとすーっと伸びるメロディー。そんなメロディーが手を引き、わたしの元へと記憶を連れてくる。
鮮やかに残る、パステルカラーの記憶。
今では遠く感じる、淡い想い出たち。
面白いよなぁ。こんなにいとも簡単に過去に飛べちゃうんだから。時空間を縦横無尽に舞う、音楽のそういうところが好き。
大好きな音楽。
その中でも格別なのが、こうしてふとした瞬間に耳に飛び込んでくる、カフェやラジオで流れるお気に入りのー曲。
スマホを開けばいつでもそこにあるのに。
スクリーンをポンっとタップするだけでうんざりするほどリピートできるのに。
なんなら、さっきまで車で聴いていたのに。
ふとした瞬間に耳に飛び込んでくる聴き慣れた曲が、どうしてこうまでも新しく聴こえるのだろうか。
それは永遠の謎だけど、わたしを一瞬で幸せにしてくれることは確か。
テーブルの少し先に目をやり、そんなことを考えている自分がいる。こうしてぼーっとする時間。なんと贅沢で平和な時間だろうか。
サンドイッチをテーブルに運ぶ店員さん。
そんな店員さんに深く頭をさげ、「アリガトウゴザイマス」と言った彼。
わたしの目には「有難う御座います」と言った彼が映った。
「有る」ことが「難い」
当たり前ではないことに感謝をする美しいこころが見えた。どこか慣れていないようで、それでいて温かい。そんな彼の少し深めのお辞儀に、こころがほんわりとした。
「コクリと、ありがとうございます。」ではなく、「深く、有難う御座います。」今度感謝を伝える時はそうしてみよう。
ぼーっとしつつも、はっきりと意識がある。そんな曖昧な空間から「今、この瞬間」に意識が戻る。
なんだろうなぁ、、、
こころに温かさが灯る、その時を見ているのが好き。
ひとつのロウソクに灯った光を、隣の人へ。そして、その人がまた隣の誰かへ。そうやってひとつの灯火が繋がってゆく、そんな瞬間が好き。
相手からすると、わたしは何の面識もないただの第三者かもしれない。けど、ただその優しい姿を遠くから見ているだけで、わたしのロウソクにも温かな光が灯る。
優しさを目にした時、
「第三者」であった誰かが、「優しさを目撃した当事者」に変わっているからなのかもしれない。
面白いよね、「優しさ」って。
一瞬でその場を温かくして、見た人の体にじんわりと入っていくんだもん。終いには、頼んでなんてないのに心まで温かくしてしまう。
優しさが世の中に蔓延してしまえばいいのに。
「緊急事態宣言発令です!!!優しさが溢れて大変です!!!」な〜んて、平和なニュースが世界中にあるスクリーンというスクリーンを占拠しちゃえばいいのに。
ひとりぼーっとぶつぶつ考えるこの時間が好き。なんの制約もなく、好きな色を好きなだけキャンバスに塗りたくって、満面の笑みで自画自賛するこの時間。
記憶を旅して、腹も、心も満たして。
ぷは〜。おなか、いっぱい。
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